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【相続財産別】相続税の申告に必要な書類一覧

相続税の申告をするために必要な書類は相続する財産により異なり、その種類も多岐にわたります。
このページでは、相続税の申告に必要な書類を「相続財産別」にまとめました。
相続税の納付期限や書類収集についてのQ&Aも載せたので、ぜひ参考にしてください。

相続税申告の流れ

まずは申告の有無を調べよう

「相続が発生=相続税の申告」というイメージがあるかもしれませんが、相続税の申告は、すべての相続で必要となるわけではありません。
相続財産の額が基礎控除額を下回る場合は、相続税の額がゼロとなり、申告の必要はありません。

相続財産=金融資産、不動産、動産、自動車、ゴルフ会員権など、換金可能なあらゆる資産
基礎控除額=相続税の非課税枠「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

基礎控除の他に「相次相続控除(※1)」「未成年者控除」「障害者控除」などを適用して相続税の額がゼロになる場合、申告の必要はありません。

一方、相続税の額がゼロでも申告が必要なケースがあります。
「配偶者控除」を適用して、相続税の額がゼロになる場合です。
また、小規模宅地等の特例(※2)を適用して相続税の額がゼロになる場合も申告が必要です。

相続税の額がゼロになる場合の申告の要・不要

相続財産の額<基礎控除額

申告不要

相続財産の額<基礎控除額+相次相続控除、未成年者控除、障害者控除など

申告不要

相続財産の額<基礎控除額+配偶者控除

申告必要

相続財産の額<基礎控除額+小規模宅地等の特例

申告必要

※1 相次相続控除:被相続人(亡くなった人)が、過去10年以内に別の相続(1次相続)において相続税を支払っていた場合、その一部を今回の相続税から控除できる制度
※2 被相続人が住んでいた土地や、被相続人が事業を営んでいた土地を相続した際に、その土地の評価額を大幅に引き下げる制度

相続税申告の流れ

相続税の申告が必要となった場合、大きな流れは
①書類を集める(保険証書や遺言書など)
②集めた書類をもとに申告書に記載
③税務署へ相続税申告書を提出
の3ステップです。
この記事では、①〜③について詳しく解説します。

相続税の申告に必要な書類

全ての方が必要な書類(身分関係)

必要書類

内容、確認事項

入手場所

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・相続人の人数を確定するため
・相続開始後10日以上経過したもの
・転籍や婚姻などをされている場合は、転籍前や婚姻前の本籍地所在地の市区町村で除籍謄本や改正原戸籍も取得する
・法定相続情報一覧図がある場合は代用可能

各市町村役場

被相続人の住民票の除票

・納税地を確認するため
・死亡時の住所地で作成される
・本籍地の記載があるもの

各市町村役場

被相続人の戸籍の附票

・住所の移り変わりを確認する書類(介護のために老人ホームに入居した場合などの住居移転の履歴)
下記に該当する場合に必要
・相続時精算課税制度適用者がいる
・老人ホームに入居し、小規模宅地等の特例を受ける

各市町村役場

相続人全員の戸籍謄本

・相続人であることを確認するため
・相続開始後10日以上経過したもの
・被相続人の戸籍に入っている相続人は不要
・法定相続情報一覧図を添付する場合は不要

各市町村役場

相続人全員の住民票

・本籍地の記載があるもの

各市町村役場

相続人の戸籍の附票

下記に該当する場合のみ
・相続時精算課税制度適用者がいる
・小規模宅地等の特例を、「家なき子」要件により適用する

各市町村役場

相続人全員の印鑑証明書(※)

・遺産分割協議書がある場合のみ(協議書に押印する実印の証明)
・原本が必要

各市町村役場

相続人全員のマイナンバー

本人確認のため
・マイナンバーカード
・通知カード
上記二つがない場合はマイナンバー記載の住民票

自宅
各市町村役場

※は各2通ずつ用意(税務署提出用1通、名義変更手続き用1通)

土地を相続する方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

登記簿謄本(全部事項証明書)

・財産評価と所有者を確認するため
・一部を記載した一部事項証明書ではなく、全部事項証明書を取得

最寄りの法務局(所有者や親族でなくても交付の請求が可能)

地積測量図及び公図の写し

・間口や実測面積を確認するため
・地積測量図がない場合は不要

最寄りの法務局

固定資産税評価証明書

・路線価が設定されていない土地についての評価額の算定に必要
・交付を受ける際は、納税通知書を持参する

都税事務所
各市町村役場

住宅地図

・路線価があるかを確認するため
・場所の特定ができるもの

最寄りの法務局等
インターネット上(ゼンリン住宅地図などで取得)

名寄帳(固定資産課税台帳)

・被相続人が当該市区町村内に所有していたすべての不動産の一覧表
・複数の市区町村に不動産を所有している場合は、それぞれの市区町村ごとに取得する必要がある
・共有不動産の場合、個人のものとは別の名寄帳になるので注意が必要

都税事務所
各市町村役場

賃貸借契約書、借地権契約書

・賃貸借している土地がある場合に必要

自宅
不動産会社等

農業委員会の証明書

・他人の農地を小作している場合に必要

各地域の農業委員会

建物を相続する方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

登記簿謄本(全部事項証明書)

・土地の場合と同じ

最寄りの法務局

固定資産税評価証明書

・建物の評価額の算定に必要
・土地の場合と同じ

都税事務所
各市町村役場

売買契約書、間取り図等

・家屋を購入した際の書類
・二世帯住宅や賃貸の場合に必要

自宅

名寄帳(固定資産課税台帳)

・土地の場合と同じ

都税事務所
各市町村役場

賃貸借契約書

・賃貸借している建物がある場合に必要

自宅
不動産会社等

上場株式を相続する方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

証券会社の預り証明書(残高証明書)

・相続開始日現在の証明書を取得
・相続税評価額算出のため、相続開始日及び相続開始日を含む過去3か月分の各月の平均終値単価がわかる情報を記載してもらう

証券会社

登録証明書(残高証明書)

・相続開始日現在の証明書を取得
・端株、単元未満株式の有無を確認
・保有している銘柄の会社ごとに名簿管理人は異なる

名簿管理人
(信託銀行証券代行部等)

配当金の支払通知書

・未収となっている配当を確認
・株式の詳細が記載されている

自宅

被相続人の最近5年間の取引明細

・顧客口座元帳、顧客勘定元帳とも呼ばれる

証券会社

非上場株式を相続する方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

過去3期分の決算書(勘定内訳書等の添付書類を含む)、税務申告書(法人税、地方税、消費税等)の写し

・非上場株式を評価するため

発行元

株式名簿

・親族関係がわかるもの
・相続開始日現在のもの

 

投資信託・その他金融商品を相続する方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

証券会社の預り証明書(残高証明書)

・相続開始日現在の解約価額の残高証明書を取得(基準価額ではなく解約価額)

契約の金融機関契約の金融機関

全ての方が必要な書類(現金預金関係)

必要書類

内容、確認事項

入手場所

預金残高証明書

・相続開始日現在の被相続人名義の預貯金の残高を確認するため
・全口座の解約価額(経過利息込み)が必要
・信用金庫や協同組合の口座がある場合は出資金の有無も記載してもらう

金融機関

既経過利息計算書

・相続開始日現在で解約したものとみなした利息計算書
・定期預金、定期積金、国債がある場合に必要
・残高証明書に経過利息の記載がある場合は不要

金融機関

過去5年分の通帳・定期預金の証書

・過去に相続人への預金の異動があった場合は、相続人の通帳も用意
・不足部分がある場合は、金融機関で不足箇所の取引明細(入出金明細)の請求が必要になる場合がある

自宅
金融機関

手元現金

・相続開始日現在、手元にある現金の額を書き出す(金庫、タンス預金等も含む)

自宅

生命保険を相続する方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

生命保険金支払通知書

・生命保険の支払いがある場合

各生命保険会社

生命保険証書のコピー

・契約者と被保険者を確認するため

自宅

火災保険等の保険証書コピー

・火災保険、損害保険など保険全般の証書

自宅

解約返戻金のわかる資料

・保険金の支払いがあったもの以外の保険については、相続開始日時点での解約返戻金額で評価

各保険会社

その他の資産を相続する方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

自動車

・車検証のコピー、車種、色、走行距離がわかるもの

自宅

退職金

・支払通知書(源泉徴収票)

自宅
勤務先

電話加入権

・契約している回線数
・電話番号と所在場所のわかるもの

 

ゴルフ会員権・リゾート会員権

・預託金証書または証券のコピー

自宅

貸付金、前払金等

・金銭消費貸借契約書及び、相続開始日現在の残高がわかるもの

自宅

貴金属・宝石、書画、骨董

・貴金属や宝石は種類とグラム(カラット)がわかるもの、鑑定書など
・書画・骨董は品名・作者名、購入年月日、購入金額、購入先が確認できるもの、またはメモ
・査定をした場合は、査定金額

自宅

未収となっている給与、地代、家賃

・相続開始以後に未収となっているもの
・契約書や支払予定がわかる証書

自宅

過去3年以内に贈与を受けている方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

贈与税申告書

・過去3年分を用意する

自宅
税務署

贈与契約書

・贈与を実施した際に作成した書類

自宅
税務署

相続時精算課税制度の適用を受けている方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

相続時精算課税制度選択届出書

選択の届け出をした際のもの

自宅

贈与税申告書

選択時以降のもの

自宅
税務署

贈与契約書

届け出の際に作成したもの

自宅
税務署

特例贈与の適用を受けている方が必要な書類

必要書類

内容、確認事項

入手場所

贈与契約書
贈与税申告書
非課税申告書

 

 

住宅取得等資金の贈与をしている場合
→贈与を実施した年の分の贈与税申告書

自宅
税務署

教育資金の一括贈与をしている場合
→金融機関発行の「教育資金非課税申告書」

結婚子育て資金の一括贈与をしている場合
→金融機関発行の「結婚子育て資金非課税申告書」

相続税の納付期限

納付期限はいつ?

相続税の納付期限は、
「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」
です。
例えば、1月6日に亡くなりその事実をその日に知った場合は、その年の11月6日が期限になります。
亡くなった日ではなく、「亡くなったことを知った日」となっているのは、遠方に住んでいたり疎遠になったりしていて、日が経ってから亡くなったことを知る場合があるからです。
上記の例でいうと、亡くなったのは1月6日だが、亡くなったことを知ったのは2月6日だったとすると期限は12月6日になります。

そして、相続税の納付期限=申告期限でもあるので注意しましょう。
10か月以内に、被相続人の最後の住所地を所管している税務署に申告書を提出し、金融機関を通じて納税をしなければなりません。

納付期限を過ぎてしまった場合のペナルティ

本来納付すべき納税額とは別に、無申告加算税と延滞税を支払うことになります。

・無申告加算税
正当な理由がなく申告期限内に申告しなかった場合に、本来納付すべき相続税に対して課税されます。
期限後であっても税務調査前に自主的に申告すれば、課税は納付額の5%ですが、税務署からの指摘後になると、納付額の15〜20%に上がります。

正当な理由とは、「災害、交通・通信の途絶その他期限内に申告書を提出しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められるとき」のみです。
「相続人同士で争っている」「相続財産が把握できない」などの理由は認められないので注意しましょう。

・延滞税
納付期限を1日でも遅れると発生するペナルティです。納付した相続税に対して課税されます。
課税される税率は、年度によって変動しますが、納付が遅くなると税率が高くなります。

その他のペナルティ
・過少申告加算税
申告書の税額が、実際より過小だった場合に発生するペナルティです。
税務署に指摘される前に自主的に修正申告を行えば課税されませんが、税務調査で指摘されると課税対象となります。その場合、追加で納付した相続税の10〜15%が課税されます。

・重加算税
相続税の申告期限内に申告はしたが、相続財産を隠したり、書類を偽造した場合は、追加納付した税額の35%が課税されます。(意図的でないとみなされた場合は、過少申告加算税になります。)
相続税の申告をする必要があったにも関わらず、故意に申告をしなかった場合は、相続税の40%が課税されます。

・特例が使えなくなる
相続税には、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」など相続税額を軽減できる特例があります。
これらの特例は、期限内に申告を行うことが条件になっています。申告が遅れると、特例が使えなくなるので注意しましょう。

書類収集についてのQ&A

Q.書類は原本じゃないとだめ?

A.原本で提出するのは「印鑑証明書」のみです。
2018年3月までは、戸籍謄本など身分を証明する書類も原本の提出が求められていましたが、2018年4月からはコピー可となりました。
そのため、印鑑証明書以外の書類は全てコピーでの提出ができます。

印鑑証明書は、印影のほかに住所と氏名が記載されている証明書です。相続税の申告では、遺産分割協議書の実印を証明するための書類なので、遺産分割協議書がない場合は必要ありません。

ちなみに、戸籍書類は原本、コピー、どちらで提出しても構いませんが、提出した書類は返却されません。
相続の手続きで何度も必要になる書類は、その都度原本を取り寄せると手間も費用もかかるので、コピーで提出できるものはコピーを利用するといいでしょう。

Q.書類収集にかかる時間はどれくらい?

A.平均して1か月前後とされています。
ただし相続内容によって必要な書類は個人差があるため、以下のようなケースが該当すると1か月以上かかることもよくあります。

・被相続人の本籍地が変わっている場合
本籍地が、出生から死亡まで同じ市区町村にある場合は、戸籍謄本の取得は一度で済みます。しかし転籍や婚姻で本籍地が変わっている場合、転籍元の市区町村役場から除籍謄本や改正原戸籍を請求して集める作業も必要になります。

・金融機関の残高証明書が必要な場合
信用金庫などは即日発行をしてくれるところもありますが、メガバンクや地方銀行、証券会社では1〜2週間程度、ゆうちょ銀行では10日から2週間ほどかかります。

・仕事が忙しく、平日に時間が取れない 
役所や金融機関は、平日の日中の時間帯での対応に限られます。仕事が忙しいなど平日に時間が取れない場合、限られた時間で収集しなくてはならず、時間がかかります。

Q.書類収集は代行してもらえるの?

A.書類によっては可能です。

書類収集を始めてから、「手間や時間がかかって大変」と専門家に頼る方も多くみられます。申告・納税には期限があり、1日でも遅れるとペナルティが発生するため、相続が発生したらできるだけ早い段階で、税のプロである税理士に依頼し、効率的な収集方法を教えてもらいましょう。
また相続税の申告は、専門的で難易度の高い手続きです。自分の判断で申告すると、知らずに過少申告をしてしまう可能性もあります。その場合は後からペナルティの課税があります。また過大申告をして相続税を払いすぎても、戻ってくることはほとんどありません。
正しい申告をするためにも税理士に依頼するのがおすすめです。

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この記事を担当した税理士
税理士法人Setup 代表 和泉 潤
保有資格税理士・行政書士
専門分野相続業務、会計顧問業務
経歴2011年に国税局を退職後、和泉潤税理士事務所を設立。その後、小笠原保税理士事務所を吸収合併する形で現在に至る。
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